2026年ネパール洪水・鉄砲水災害 緊急支援(ピースウィンズ・ジャパン)

寄付受付開始日:2026/08/27

  • 領収書あり
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(2026年8月27日、ネパール 写真:ロイター/アフロ)

認定特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン

プロジェクト概要

更新日:2026/08/27

【ネパール洪水・鉄砲水災害】緊急支援を開始します

現地時間2026年8月26日(水)朝、ネパールと中国の国境付近に位置するラスワ郡で、大規模な洪水や土石流が発生しました。大量の土砂や洪水が押し寄せ、現地警察当局によるとこれまでに157人の死亡が確認されています。

(2026年8月27日、ネパール 写真:ロイター/アフロ)

この甚大な被害を受け、ピースウィンズ・ジャパンは緊急支援の実施を決定しました。

AP通信によると、ネパール当局の話として外国人341人を含む403人が行方不明となっており、内訳はインド人133人、アメリカ人47人、オーストラリア人34人などと伝えられています。また、観光客とみられる日本人5人とも連絡が取れておらず、現地の日本大使館が確認と情報収集を進めている状況です。

(2026年8月26日、ネパール 写真:ロイター/アフロ)

スタッフはまず首都カトマンドゥに入り、現地でのニーズ調査を進めるとともに、被災された方々への支援を開始していきます。また、ピースウィンズが運営する医療を軸とした災害緊急支援プロジェクト「空飛ぶ捜索医療団"ARROWS"」は、WHOが認証したEMT(Emergancy Medical Teams)Type 1 Mobileの認証チームとして、現地の情報収集を続けています。

厳しい状況にある被災地へ必要な支援を届けるため、皆さまの温かいご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

■被災地で予定している支援活動
・支援ニーズ調査
・緊急物資支援
・その他被災地のニーズに応じた支援

被災地への緊急支援に、皆さまのご支援をよろしくお願いいたします。

■領収書の発行について
ピースウィンズ・ジャパンは広島県の認定を受けた「認定NPO法人」です。そのため、当団体へのご寄付は税制上の優遇措置(寄付控除)の対象です。

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・緊急物資支援
・その他被災地のニーズに応じた支援
・支援に伴う事務局運営費
・今後の災害支援に対する準備

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活動報告

更新日:2026/09/09

いまだ見えぬ被害の全容。これから必要な支援を考える(2026年9月9日更新)

(2026年9月1日、ネパール・ヌワコット郡)

2026年8月26日、ネパール北部のボテコシ川で発生した大規模な洪水は、ラスワ郡をはじめ、ヌワコット郡、ダディン郡、ゴルカ郡、チトワン郡などにかけて住宅や道路をはじめ、橋、学校、医療施設、発電施設などに甚大な被害をもたらしました。

9月3日正午時点のネパール国家防災管理庁(NDRRMA,National Disaster Risk Reduction & Management Authority)の発表によると、これまでに1,252人の死亡が確認され、4,216人の安否が確認できていません。また、11,993人が救助され、5,135人が医療機関や医療チームによる治療を受け、3,948人が一時的な収容施設などで避難生活を送っています。

インフラへの被害も深刻です。NDRRMAの調査によると、コンクリート橋41本が完全に流失し、なんとか残った4本が損傷。ヌワコット郡では、1,267棟の住宅が全壊、1,253棟が部分損壊したと報告されています。また、多くの医療施設や学校にも被害が及んでいます。

一方、ラスワ郡などでは現在も一部地域へのアクセスが制限されています。被災地では救助・捜索活動が続くとともに、避難生活を支えるための支援が必要となっています。

ピースウィンズは、被災地の状況と支援ニーズを把握するため、これまでヌワコット郡ビドゥル周辺を中心に現地調査と関係者との情報交換を行ってきました。現地では、食料や水、衣類の配布、医療支援など、命を守るための緊急支援が進められています。一方で、避難生活が長期化するなか、新たな課題も見え始めています。

捜索救助から避難生活を支えるフェーズへ
災害発生直後、被災地では孤立した住民の救助や安否確認が急がれました。道路や橋が流失したことで、ラスワ郡などでは一部地域へのアクセスが困難となり、ヘリコプターによる救助・物資輸送が必要となった地域もありました。

その後、各地で避難所が設けられ、食料や水、衣類などの支援が届けられています。医療機関や医療チームによる診療も行われ、被災者の命を守るための緊急対応が続けられています。しかし、避難所での生活が数日、数週間と続けば、必要となる支援も変化します。

一つの部屋に多くの人が集まって生活することによる衛生面の課題や、洗濯・入浴などの生活環境の改善、調理器具や燃料の調達、衣類や下着などの生活用品、さらに持病のある人や高齢者など要配慮者や、子どもたちへの継続的なケアなどが必要になります。

今回の現地調査を通じて見えてきたのは、まさにこうした「捜索救助の緊急フェーズの次に必要となる支援」でした。

「避難先の環境」という課題
2026年8月31日、ピースウィンズの現地チームは、ヌワコット郡ビドゥル市のゲルクタール村(Gerkhutar)を訪問しました。現地の状況を確認するとともに、区長や行政関係者と面会し、被災者からも直接話を聞きながら調査を進めます。

現地では、約300世帯が深刻な被害を受け、150人以上が学校の建物で避難生活を続けています。そのほかの住民は、周辺の親族宅や村の外へ避難したといいます。

食料や衣類については、複数の団体が支援に入り、地方政府も支援物資が被災者に行き届くよう調整を進めていました。一方で、避難生活を続けるうえでの課題も明らかになっています。特に大きな課題の一つが、衛生環境です。

(2026年8月31日、ネパール・ヌワコット郡)

子どもから高齢者まで、多くの人が一つの部屋で生活しています。避難生活が長引けば、感染症の予防や清潔な生活環境の確保がより重要になってきます。

また、現在の避難先だけでは長期的な生活を支えることが難しくなる可能性があり、より安全な場所で、一定期間生活するための仮設住宅のようなシェルターの必要性も指摘されていました。

現地へのアクセスは可能でしたが、日中はう回道路を利用しなければならなかったり、昨日通れなかったところが今日は通れなくなるなど、状況は日々変化しています。適宜道路状況を確認しながら活動する必要があります。

Devighatで見えた、長期避難への備え
2026年9月1日、ビドゥル市のデビガート村(Devighat)を訪問。この地域では、約400世帯が被災。地方政府は、避難先として学校とアーユルヴェーダ病院の2カ所を避難所として指定し、学校には約200人、病院には約150人が避難していました。

それぞれの避難先では、支援団体が食料を1日3回提供。また、支援物資は中央と区の双方で集められ、被災者カードを準備したうえで、対象者を確認しながら配布する取り組みが進められていました。

食料などの緊急支援は一定程度確保されている一方、避難生活が長期化すれば、現在の環境だけでは十分に対応できなくなる可能性があります。そのため、ここでもより安全な場所で継続的に生活するための新たなシェルターが必要とされていました。

また、現在の避難先は自然災害からは比較的安全とみられていましたが、多くの人が集団で生活することによる健康面・衛生面の課題も懸念されています。ピースウィンズは現地を訪問し、避難状況や支援内容を確認するとともに、区の関係者と今後の支援について調整を行いました。

医療や食事は確保されつつも、生活物資に課題

(2026年9月1日、ネパール・ヌワコット郡)

2026年9月2日、Chandra Jyoti Secondary Schoolを訪問。この避難所では約150世帯が生活し、近隣のアーユルヴェーダ関連施設にも約200世帯が避難していました。

現地では、食料、水、衣類などの支援が届いており、生活に必要な物資は一定程度確保されていました。一方で、下着など、日常生活に欠かせない物資が不足していることも確認されました。

医療面では、災害発生当初からネパール軍による24時間体制の診療が行われていました。9月1日には141人が診察を受け、持病や発熱、軽い体調不良などへの対応が行われたほか、破傷風予防のワクチン接種も実施されていました。災害に関連する治療は無料で提供されています。

また、支援団体による炊き出しのような共同調理も行われ、避難者の食生活を支えていました。こうした支援によって、避難生活を支える基盤は整えられつつあります。しかし、避難生活が続けば、調理器具や燃料、食器、衛生用品など、日々の暮らしに必要な物資を継続的に確保することが課題となります。

ピースウィンズは、このSundari Kyorini Higher Secondary Schoolで、約300世帯を対象とした調理用品の支援を検討しています。この学校には、長期間にわたって避難生活を続ける可能性のある住民が集まっており、約300世帯が避難生活を続ければ、現在ある物資は早期に不足する可能性があるためです。

被災地で見た、人々の日常

(2026年9月1日、ネパール・ヌワコット郡)

今回、訪れた各避難所では、被災した人々は大きな混乱もなく落ち着いていて、子どもたちが遊ぶ姿も見られました。大きな被害を受け、住まいや生活基盤を失った人々は、避難先で日々の生活を取り戻そうとしています。

しかし、被災者が抱える不安や困難がなくなったわけではありません。避難生活が長引けば、住居の再建、仕事・収入の確保、子どもたちの教育、心身の健康など、さまざまな課題に向き合う必要があります。

現地で見たのは、被災の大きさだけではありません。厳しい環境のなかでも、自分たちの生活を少しずつ立て直そうとする人々の姿でした。

その希望を支えるためには、必要な物資を届けるだけでなく、被災者が安心して暮らせる環境を整え、地域の行政や住民自身が復旧・復興に取り組めるように支援していくことが重要です。

これから必要になる「次の支援」
発災から約1週間、被災地では現在も続く捜索救助活動や安否確認と並行して、避難生活を継続的に支えるための支援が重要になってきます。確認された主な課題は、避難所の衛生環境、調理環境、生活用品、安全な水、医療への継続的なアクセス、そして長期避難に対応できる住環境です。

現地で調査および支援活動を行う空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”の戸田看護師は、現状について次のように説明します。

「私たちが訪問した避難所には人が多く集まっていますが、もっと小さな場所で誰も気づいていない避難所がある可能性もあります。この学校の避難所も近いうちに再開するとも聞いているので、いつまでもここで生活することはできません。

家族のために10kg以上の食料を背負って泥のなかを歩いていた方は、連絡がとれない家族もいますが『今を生きるのが精一杯で、先のことは考えられない』と話してくれました。これからどこでどうやって生活していくのか。家族は生きているのか。おそらくこれから現実が少しずつ重くのしかかってきて精神的な不安が大きくなってくるのだと思います」

(2026年8月31日、ネパール・ヌワコット郡)

被災地の状況や必要とされる支援は、地域によっても異なります。道路や橋の復旧状況、避難者数、支援物資の在庫、行政による対応などを継続的に確認しながら、その地域で本当に必要とされている支援を見極めていくことも必要です。

ピースウィンズは、現地の行政関係者や被災者の声に傾け、さまざまな支援団体と連携しながら支援ニーズの把握に努め、被災した方々が一日でも早く安心した生活を取り戻すために必要な支援を必要な人々に届けられるように調査と支援を続けていきます。

初動調査を終えて、支援物資を積んだトラックで夜通し山道を越えて見たもの(2026年9月7日更新)

2026年8月28日、11年ぶりのネパール。2015年に起きた大地震の際に救援活動で初めてこの地を踏み、今回は洪水災害の初動調査で現地入りしました。

11年前(2015年)は、ネパールがこれほど美しい国だということを知ることはできませんでした。全土が被害を受け、余震は何週間も続き毎日が緊張の連続で、目の前にそびえるヒマラヤの存在さえ目に入らなかったのです。

今回、カトマンズから被害が大きいと言われる北へ向かう道中、初めてこの国の美しい川と山々を眺めていましたが、数時間後、その光景は一変します。川の濁流が村を丸ごと消し去った跡を見ることになりました。

洪水ではなく、川をくだってきた“津波災害”

(2026年8月29日、ネパール・ヌワコット郡)

洪水は、2026年8月26日午前9時頃、チベット国境側で始まりました。氷河湖が決壊し、土石流が発生。ラスワ、ヌワコットの二つの郡の川沿いの集落や町を一気にのみ込んでいきました。9月3日の時点で死者は1,200人以上、行方不明者も5,000人を超えたといいます。行方不明者の中には多くの外国人が含まれていると伝えられ、国境貿易とトレッキングの要衝で起きた災害だったことが、さらに被害を大きくしたと言われています。

私たちが到着した日にも、上流の湖が再び決壊するおそれがあるとして警報が鳴り響いたことがあります。川岸で救助活動をしていた要員と住民全員に避難指示が発令され、現場は一時、騒然となるなか、私たちも引き返さざるを得なくなりました。

ピースウィンズが海外で緊急支援の活動を行うとき、現地の地理にあかるいドライバーを雇うことが多いのですが、今回、そのドライバーを探すことさえ容易ではありませんでした。政府から二次、三次の洪水発生の可能性が警告され、被災地の方へは行かない、あるいは行きたくないという方が多かったのです。「被災地にどのように入るか」その移動手段を見つけることに苦労しました。

こうした事実からも、今回の被害の大きさが想像させられました。

なんとかドライバーを確保し、初動調査を開始。初日は、ヌワコットのデビガット村を訪れましたが、その光景を見て、「これを“洪水被害”と呼んでいいのか」と疑いました。建物の1階まで土砂とがれきが押し寄せ、建物そのものが埋もれて見えなくなっている場所もあります。住民たちは膝まで沈む泥の中で、家財を掘り出し、商店や食堂、宿があった橋の向こう側は、川底になっていました。

(2026年8月31日、ネパール・ヌワコット郡)

活動2日目、ラスワのベトラワティ・バザールに行ったとき、その疑いは確信に変わりました。川が合流する地点にあったはずの町は川になっていて、横倒しになったスクールバスが川の真ん中に埋まっていました。町が丸ごと消えてしまったのです。災害支援の観点からはこれは洪水ではなく、川を下ってきた「津波」として捉えるべきだと考えました。支援の方法が、まったく異なってくるからです。

「政府の倉庫に入れて帰れ」
3日目、カトマンズで食料と生活必需品を購入してトラックに積み込み、災害調整委員会のあるビドゥールへ。途中の検問所では、トラックに積んだ物が何か、誰に配布するものなのかを問われる一幕もありましたが、いろいろ説明した末になんとか通過できました。

ビドゥールの災害調整委員会(DCC)の事務所で物資を配布したいと伝えると、第一声は「政府が必要な場所に配分するから、政府の倉庫に入れて帰れ」。しかし、近隣一帯は、すでに政府が十分にカバーしているので、もし直接届けたいのであればもっと北のエリアへ行ってほしい、とも言われました。

(2026年8月29日、ネパール・ヌワコット郡)

11年前(2015年)、救援物資を積んだトラックで山道を上っていたとき、村の住民たちに道をふさがれたことを思い出しました。若者や妊婦まで出てきて、物資を自分たちの村に下ろさなければ道を空けないと言ってきたのです。村の人々も食料不足で苦しんでいましたが、ここで奪われるように物資を渡してしまえば、彼らを強盗にしてしまうことになる……一時間以上かけて説得と交渉を重ね、なんとか通させてもらい、当初の目的地だった支援が行き届いていない村へと向かった記憶です。

あのときに比べれば、今回のネパール政府の統制ははるかによく機能していたように思います。物資がどこから入り、どこへ出ていくのかがきちんと記録され、11年前のようなカオスと呼ぶべき状況は少なかったからです。

“政府が管理する”という言葉は、時に歯がゆく聞こえるかもしれませんが、災害現場で政府の調整が機能し、物資が避難所に配布されていることは良い知らせです。言い換えれば、政府が把握できていないエリアには物資が行き届いていないということでもあり、その政府の担当者は、ラスワ側のベトラワティにある救援物資の集積拠点を指定し、う回路まで教えてくれたのです。

夜通し山道に閉じ込められて
教えられたう回路は、30分もしないうちに車一台がやっと通れる土の道に変わっていきました。あちこちで水が道を遮るように流れ、日が暮れると雨が降りはじめました。ある地点では、道を横切る水の勢いが目に見えて強く、高くなり、先頭を走っていた車両の合図ですべての車両は停止しました。

「これ以上、前に進むのは危険だ。雨がやめば水の流れも落ち着くから待とう」

その言葉を信じて私たちもエンジンを切り、灯りひとつない漆黒の闇のなか、窓を閉めたまま車内で待つことに。コーディネーターとして同行してくださっていたバクタさんが「水が上がってきている」と知らせてくれ、実際に車の外を見ると、水の流れは車のすぐ近くまで来ていました。

このまま流れがもっと強くなってきたら、ここも川にのみ込まれる――

そうした緊張した状態が3時間近く続きました。そして午前3時45分頃、ようやく雨がやみ、車列が再び動き出しましたが、ところどころ車が埋まってしまうほどの深い水たまりが残っていた道では、車に乗っていた全員が降りて、みんなで石を運んで道を補修しながら前に進んでいきました。

この夜の出来事で、陸路でう回路を使って物資を運ぶのはとても危険で、さらに時間がかかることを学びました。今、この地域に必要な支援は、トラックをもう一台送ることではなく、別の形の支援を設計することでした。

生き残った550人の生徒、親を失った120人
午前5時、ラスワのカリカスタンに到着。村の人々が家の外の高い場所に集まっていました。4時半ごろ山のほうで洪水が起き、外に出て避難していたといいます。人々の目には不安と恐怖が宿り、私たちはしばらく彼らのそばに寄り添い、話を聞くことにしました。不安を抱える人の多くはその不安を言葉にすることで、少しだけ落ち着くことができるからです。

少し明るくなって、物資が集積しているという丘の上のシュリー・ニーラカンタ中等学校に到着。生徒550人が通う学校で、高い場所にあったため生徒たちは生き残ったといいます。しかし生徒たちの家はほとんど川沿いのベトラワティ・バザールにあり、土石流で流されたといいます。校長先生が状況をこう説明してくれました。

「生徒のうち120人ほどが親や家族を失った……どうすればいいのか分からない」

物資を運んでいる間、ずっとその言葉が耳から離れません。

(2026年8月29日、ネパール・ヌワコット郡)

集積拠点は、厳しい状況の中でもよく運営されていて、食料とそのほかの生活用品は分けて保管され、入ってきた物資を文書で記録。最も近い避難所から配分していく体制が整っていました。この拠点の先、道が途絶えた国境側の集落には、政府と軍のヘリコプター以外、誰もたどり着けないといいます。

近くの避難所を訪ね、必要なものはなにか尋ねると、彼らが真っ先に挙げたのは寝具とマット、タオル、そして調理用のガスでした。道が途絶えたことで、LPGのガス燃料が地域全体で底をつきかけ、調理ができない状況だと説明してくれました。

そのほかにも電気もなく携帯電話が使えないため、ソーラーランプと充電器、できれば発電機が必要だと訴えてきました。口には出さなかったのですが、衣類や衛生用品、枕、靴下やサンダル、子どものための物も不足していたように思います。

また、名簿に記載されていない人々が実はたくさんいることも分かりました。多くの家族が同じ地域や別の地域の親戚の家に身を寄せていたのです。一軒に数十人が一緒に暮らしているケースもあります。こうした人々は、避難所の名簿にはないため、支援の対象からは漏れやすくなります。もしも被災者を受け入れている家が崩れれば、こうした“見えない”多くの被災者も行き場を失ってしまう、危い状況でした。

一カ月後のほうが心配だ

(2026年8月31日、ネパール・ヌワコット郡)

今、食料等はアクセス可能な地域から入ってきています。問題は一カ月後です。ニュースの露出が急激に減っていき、世間の関心が冷めるころには支援もなくなっていくのは、日本でも海外の災害現場も同じです。

医療支援を訴える声も聞かれましたが、災害現場で中長期にわたって残る課題は、心の問題です。親を失った120人もの子どもたち、家も財産もすべてを失った人々の心理支援を今から設計しなければなりません。この問題は、数週間のものではなく、数年かかる課題です。

今回、往復24時間以上を道の上で過ごしましたが、トラック一台分の物資しか届けられませんでした。その一日を無駄にしないためには、この長い移動が、必要な支援を必要とする人々に確実に届けられ使われなければなりません。そのためには行政と緊密なコミュニケーションをとりながら支援が行き届いていない地区を把握し調整すること、そして道の状況なども含めて現場の正確な情報を持つ人々と連携し、協力することが重要です。

ネパールの人々と政府は、この初期対応のあと、強固なインフラを再建するため、長い復旧・復興の時間を必要とします。川が津波となってのみ込んだ村は、元の場所には戻れないかもしれません。それでも、丘の上の学校で物資を下ろしていた村の人々、暗闇の中で車の脇に来て水が上がっていると教えてくれた人々、一緒に石を運んだ人々を思い、この国の未来を願います。次にネパールを訪れるときは、どうか災害のためではないように、と。

イ・チャンウ(Jangwoo Lee)
ピースウィンズ・ジャパン
統括責任者補佐/コミュニケーション部・部長
国内外の数多くの災害現場で支援活動に従事。現在はさまざまな新規事業を手掛ける傍ら、広報・ファンドレイジングを担うコミュニケーション部を統率する。今回はネパール洪水・土砂災害の発生を受け、初動調査のため現地入り。被災状況の確認と今後の支援に関する情報収集を行った。

「すべてを失った」被災地へ。道路・橋が破壊され広範囲で集落が孤立状態に(2026年9月2日更新)

(2026年8月28日、ネパール・バグマティ州)

2026年8月26日、ネパール北部の中国との国境付近で発生した大規模な洪水・土石流は、ボテコシ川(Bhote Koshi River)からトリスリ川(Trishuli River)の流域を襲い、住宅や道路、橋、発電施設などの重要インフラに甚大な被害をもたらしました。

2026年8月27日、ネパール国家災害リスク削減・管理当局(NDRRMA)は被害状況について、死者は389人、負傷者73人、行方不明・連絡不能者977人と発表(第6次状況報告)。その後、8月29日午前時点の発表では死者626人、行方不明・連絡不能者2,426人、負傷者は101人にまで人的被害は拡大したとしています。しかし、現在もなお捜索・救助活動は続いており、被害の全容はまだ明らかになっていません。

また、NDRRMAの救援要請をもとにしたIOMの状況報告によると、約8,692世帯が被災。さらに国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)の調査では、少なくとも1万世帯が家を失ったと推計しています。

こうした被害状況を受け、ピースウィンズは現地での支援に向けた被災状況の把握とニーズ調査を開始。2026年8月28日に被災地へ入った調査員からは、統計だけでは捉えきれない、現場の深刻な状況が報告されました。

「津波被害に近い」――現地調査員が見た被災地
今回の洪水によって多くの道路は大規模に流失し、特にラスワ郡からヌワコット郡北部にかけてのボテコシ川・トリスリ川上流域では道路が寸断され、広範囲にわたって孤立した地域が残されています。

ピースウィンズの調査員は、ネパールの首都、カトマンズから車でおよそ3時間かけて、大きな被害を受けたというデビガット村へ。その状況について「津波被害に近い」という印象を受けたといいます。周囲には強い腐敗臭が漂い、洪水によって道路や周辺の土地は大きく侵食されていました。

(2026年8月28日、ネパール・バグマティ州)

一部の家屋はかろうじて残っているものの、ホテルやリゾートがあった一帯は、ほぼ更地となっていたといいます。洪水・土砂災害は、人々の住宅だけでなく、地域の生活基盤や経済活動にも大きな爪痕を残しています。

単純な修復作業では対応できず、道路そのものを新設する必要があるとみられており、復旧には数年単位の時間がかかる可能性があるといわれています。

二次災害の危険――現場への移動が突然遮断されることも
現地では、被害を受けた地域へ向かうこと自体が危険を伴います。ピースウィンズの調査員が現場に滞在していた際には、土石流によって川がせき止められて形成されたダム状の地形が、決壊したとのアラートが発令。現場へ向かう車両の交通規制がしかれ、周辺の商店は一斉に閉鎖、現場から戻ってくる車両が急増して交通が一時まひするなど、緊迫した状況も報告されました。

現地では、危険が去ったわけではありません。今回の災害では、上流で形成されたせき止め湖や不安定な地形による二次的な洪水発生の危険が指摘されており、2026年8月29日現在も、悪天候などによって救助活動が一時的に制限されるなど、現場の安全確保が大きな課題となっています。

孤立する地域――支援を届けること自体が課題に
北側の被災エリアでは、道路の寸断によって広範囲が孤立した状態となっており、現在も多くの住民が自宅などにとどまっているとみられています。まずは被災地域にどれだけの住民が残っているのか、またどの地域でどのような支援が必要とされているのかを把握することが、今後の支援活動において重要になります。

(2026年8月28日、ネパール・バグマティ州)

道路や橋などが破壊され、被災地へのルートが閉ざされているなか、2026年8月28日の時点で唯一アクセスが可能な避難所として確認されているのがカトマンズからおよそ2時間ほど北にあるセカンダリースクールで、約250人が避難しています。明日以降、衛生用品に加え、シャベルや長靴など、被災した家屋の整理・清掃に使用する資材などの支援物資を届ける予定です。

ヘリも物資調達も――支援活動を阻むさまざまな壁
今回の現地調査で浮かび上がったのは、被害の大きさだけではありません。被災地へ向かう道路そのものが失われ、現地では物資を調達することも容易ではなく、支援団体の活動も限られています。

(2026年8月28日、ネパール・バグマティ州)

政府は、陸路によるアクセスが困難なことから、ヘリコプターを動員して捜索救助・救援活動を行っています。また、被災地では物資を調達することもできません。そのため、必要な物資はすべてカトマンズで購入し、車両で被災地まで運び込む必要があります。

被災地へ向かうドライバーや車両の確保も容易ではありません。現場へ向かう車両そのものが少なく、今回の支援では「何を届けるか」だけではなく、「どのルートを使い、どうやって被災地まで届けるか」が大きな課題となっているのです。

生活に必要なものすべてがない
今回、協働して初動調査を行っている一般社団法人アジアパシフィックアライアンス(A-PAD)のハシムさんは、現状をこう説明してくれました。

「貧富の差に関係なく、被災した人はすべてを失いました。家や衣服のような生活必需品だけでなく、出生証明書や家屋の権利証のような重要書類をなくした人も多いでしょう。社会全体で支援しないと間に合いません。生活に必要なものすべてがありません。地域社会だけでなく、国際社会としてもやるべきことが山積しています」

災害から時間がたつにつれて、現地で必要とされる支援は変化していきます。まずは、いち早くいま必要とされる物資を必要としている被災者に迅速に届けること。そして、現地の状況を継続的に確認しながら、医療支援や中長期的な復旧支援につなげていくことが求められています。

ピースウィンズでは、物資支援に加え、関係機関と調整した上で医療面での支援も検討。空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”の看護師が2026年8月29日に日本を出発し、現地に向かいます。甚大な被害を受けたネパールの被災地で、ピースウィンズは現地の関係者やパートナー団体と連携しながら、必要な支援を一人でも多くの人へ届けるための活動を続けていきます。

ネパールで大規模洪水・鉄砲水が発生。死者157人、245人が行方不明に(2026年8月27日時点)(2026年8月28日更新)

2026年8月26日、ネパール中部を流れるボテコシ川周辺で、大規模な洪水・鉄砲水が発生しました。ラスワ郡および下流のヌワコット郡全域に、中国・チベット自治区との国境に近い山岳地域から大量の水や土砂、岩石が流れ込み、川沿いの集落や道路、橋、水力発電関連施設などに大きな被害が出ています。

ネパールの国家災害リスク削減・管理当局(NDRRMA)によると、8月27日午前の時点で157人の死亡と75人の負傷者を確認。15機のヘリコプターによって116人が救助されましたが、連絡がとれない行方不明者は245人にのぼると発表しています。

一方、海外メディアでは、その後の捜索によって死者が162人に増えたとの報道もあります。現地では、捜索救助活動が続いているため、今後、被害状況はさらに拡大される可能性があります。

この緊急事態を受け、ピースウィンズでは被害状況を確認するために、初動調査チームの現地派遣を決定しました。

集落が土石流にのみ込まれる
今回の災害で特に大きな被害が発生しているのが、ネパール北部の中国との国境に近いラスワ郡。ネパールの国営日刊紙「The Rising Nepal」によると、ラスワ郡ではティムレ(Timure)やシャブルベシ(Syafrubesi)周辺などでは集落全体が鉄砲水にのみ込まれたほか、広範囲にわたって道路や橋、水力発電施設などのインフラにも甚大な被害が出ていると報じています。

同紙によると、今回の洪水で41本の橋が使用できなくなったとのこと。こうした橋や道路インフラの破壊は、特に山岳地帯の被災地域への進入そのものが難しくなることから、行方不明者の捜索や、今後の支援物資の輸送などにも影響することが懸念されています。

観光局では403人と連絡が取れない状態と発表
今回のネパール洪水では、地元住民だけでなく、多くの観光客も被災しています。ネパール観光局(Nepal Tourism Board)は、ラスワ郡の洪水を受け、403人と連絡が取れない状況を発表。このうち341人が外国人で、このなかにはトレッキングの名所で知られるゴサインクンダやカイラス・マンサロワール方面を訪れていた観光客や旅行者などが含まれているとのことです。観光局は、警察や地方行政、治安当局などを動員し、連絡が取れなくなっている観光客の状況確認を進めています。

被災地域は、中国・チベット自治区に向かうルートの一部にあたり、ヒマラヤ地域を訪れる観光客や巡礼者も多い場所です。そのため、観光客・旅行者などの外国人の安否確認も大きな課題となっています。

日本人5人とも連絡取れず 日本政府も対応
在ネパール日本大使館によると、2026年8月26日夜の時点で現地のツアーに参加していた日本人5人と連絡が取れていません。日本の外務省は、8月27日に「ネパール中部ラスワ郡および中国チベット自治区シガツェ市で発生した水害について」の情報を公開。大使館は、ネパール政府に対して捜索・救助を要請しており、邦人保護の観点から情報収集を続けています。

なぜ大規模な洪水・鉄砲水が発生したのか
今回の災害で大きな注目を集めているのが、「なぜこれほど急激に大量の水と土砂が流れ込んだのか」という点です。

「The Rising Nepal」は、ICIMOD(国際山岳総合開発センター)による衛星画像などの初期分析として、ラスワガディ国境付近から約20キロ北東で岩石と氷の大規模な崩落が起き、その土砂などがLhende川を一時的にせき止め、その後、大量の土砂を含む鉄砲水が発生した可能性を伝えています。

このような現象では、河川の水だけでなく、大量の岩石や土砂などが一緒に流れるため、建物や橋、道路などを破壊する力がより大きくなると考えられます。実際にReutersが報じた映像でも、濁流と大量の土砂が建物や車両をのみ込み、道路や橋などのインフラが大きく損壊する被害の様子が確認されています。

さらに同紙には、崩落した岩や土砂などによって川が一時的にせき止められ、高さ約50メートルの天然のダムのような地形が形成された可能性があり、その上流側には深さ約7メートルの水がたまっているとの分析も掲載されています。

このせき止められた土砂などが崩れた場合、たまった水が土砂や岩石とともに再び一気に下流へ流れ出し、さらなる被害につながる可能性があります。ICIMODも、上流の堆積物による一時的な河川のせき止めについて調査を進めており、二次的な洪水の危険性を指摘しています。

地震? 氷河雪崩が原因か?「大雨による洪水」とは異なる可能性
災害発生当初は、現地で観測された地震活動が氷河の崩落に関係した可能性も指摘されていました。しかし、その後の分析では、当初地震とみられた信号そのものが、氷や岩の大規模な崩落に伴って発生した可能性が示されています。

USGS(アメリカ地質調査所)は当初、現地で発生した揺れをマグニチュード4.4の地震として検出し、公式サイトにもネパールのコダリ北西約77キロを震源とするM4.4の記録を掲載しています。しかし、その後の分析では、当初地震とみられた揺れは、氷や岩の大規模な崩落と、それに続く土砂流によって生じた地震波だった可能性が示されています。

こうした分析から、今回の災害は単純な大雨による河川氾濫ではなく、山岳地帯で発生した氷や岩の大規模な崩落と、それに伴う土砂・水の流下が大きく関係している可能性があります。ただし、ICIMODは、氷・岩の崩落が洪水の引き金となった可能性を示しつつも、現時点ではその原因は確認されていないとしています。

ヒマラヤ地域では、気候変動による気温上昇に伴って氷河の融解が進み、氷河や山腹の安定性が変化することで、洪水や雪崩、土砂災害などのリスクが高まる可能性が指摘されています。一方、今回の災害について、気候変動がどの程度関与したのかは現時点で明らかになっていません。まずは発生の直接的なメカニズムを明らかにしたうえで、気温や氷河の状態など、長期的な環境変化との関係を検証する必要がありそうです。

スタッフはまず首都カトマンドゥに入り、現地でのニーズ調査を進めるとともに、被災された方々への支援を開始していきます。

引き続き支援を求めています

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認定NPO法人ピースウィンズ ・ジャパンは、日本に本部を置き、国内外で紛争や災害、貧困など人為的な要因による人道危機や生活の危機にさらされた人々を支援する国際NGOです。大西健丞により1996年に設立され、世界各地に支援を届け続けています。
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