災害で失われる命を救うために(空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”)

寄付受付開始日:2023/10/27

  • 領収書あり
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モルドバでの仮設診療所での医療支援の様子(2022年4月11日 モルドバ キシナウ市)

認定特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン

プロジェクト概要

更新日:2024/12/26

詳細はこちら

国内外の被災地に、支援の手を。

ピースウィンズ・ジャパンが運営する空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”は、大規模災害の被災地で医療支援を行う災害緊急支援プロジェクトです。
「一秒でも早く、一人でも多く」被災者を助けたい。その想いを胸に、被災地にいち早く駆けつけます。

航空機やヘリコプター、医療船などを駆使して、医師や看護師、レスキュー隊員、災害救助犬などの救助チームを現地へ派遣。捜索から野外病院運営まで、医療を軸とした救助・救命活動を行います。

外部パートナーと連携して取り組んでいます

また、自治体・自衛隊・消防などと連携することで、物資支援や避難所運営など被災者に寄り添った活動をスピーディーに実施しています。

●大規模災害「未治療死」をなくしたい
首都直下型地震では、発災後8日間で、約6,500人が病院に搬送されても治療を受けられずに死亡する可能性があるという試算があります。<防災科学技術研究所/日本医科大学の研究グループ>

トルコ大地震の被災状況(2023年2月8日 トルコ ハタイ県)

約10万5,000人の死者・行方不明者を出した関東大震災から2023年9月で100年になりました。この間、私たちは自然の猛威による「想定外」に繰り返し翻弄(ほんろう)されてきました。
阪神大震災(1995年)や東日本大震災(2011年)では多くの医療機関が機能不全に陥り、大勢の人が適切な治療を受けられずに亡くなっています。
発生が見込まれる首都直下地震で約6,200人、南海トラフ巨大地震では約8万人もの「未治療死」が出るとの試算もあります。

空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”の紹介、現場での活動について

●「フィールドホスピタル(野営病院)」の整備・運営事業
私たちが運営を目指しているフィールドホスピタル(野営病院)では、診療所レベルの医療体制に併せ、ヘリコプターなどのロジスティクスを活用した患者搬送機能をもちます。
特に大規模な災害が発生した際、多くの医療機関では体制がひっ迫し、本来受けられるはずの治療が受けられず亡くなってしまう「未治療死」による犠牲を減らすことを目的としています。

空飛ぶ捜索医療団によるフィールドホスピタル(2022年12月10日 高知県 田野町)

このフィールドホスピタルを展開できることで、被災地域でひっ迫する医療機関の能力をサポートすることが可能となります。

●民間支援団体による災害医療支援船の運用を開始
大規模災害への備えとして、ヘリパッド付きの災害医療支援船の運用を開始、民間支援団体による3,500トン級の災害医療支援船の運用は、国内初となる取組みです。
 今後起こると予想される南海トラフ地震や首都直下地震などの大規模地震では、陸路が寸断されるため、空と海の活用が災害対応の肝になるとされています。

災害医療支援船 Power of change(2023年5月10日 マレーシア ラブアン島)

●これまでの支援活動
東日本大震災以降、空飛ぶ捜索医療団の前進となる災害支援チームから、私たちはほぼ全ての激甚災害に出動し、民間組織として支援活動を実施してきました。
災害発生が予測される場合に、発生前から対象地域に入って備えることや、声が届きにくい被災者に寄り添い、行政の支援が行き届かない地域や自主避難所などにも支援を行うことは、民間ならではの強みです。

【これまで行ってきた支援活動】※一部抜粋
・2019年9月 九州北部での豪雨災害、台風被害への支援活動
・2020年1月 コロナウイルス感染拡大時の物資提供
・2022年2月 コロナウイルス罹患(りかん)者が急増したパラオでの医療支援
・2022年3月 ウクライナ危機における避難民支援
・2023年2月 トルコ・シリア地震での被災地支援
・2023年5月 石川県能登地方地震での被災地支援
・2023年9月 ハワイ・マウイ島山火事被災地支援

災害発生時のレスキューの様子(2018年9月7日 北海道 胆振東部)

地震や豪雨、台風などの災害発生時には、被災地に医師や看護師・薬剤師を即時派遣。医療活動のほか、避難民の捜索や高齢者家庭への戸別訪問も実施しました。

コロナウイルス感染拡大時のワクチン接種の様子(2021年4月16日 愛媛県 新居浜市)

2020年1月、新型コロナウイルスの感染が広がりパンデミック(世界的大流行)が始まって以来、2023年現在に至るまで、全国各地への医療支援および不足している医療物品の物資支援を継続してまいりました。その数は4,300カ所以上にのぼります。

モルドバでの仮設診療所での医療支援の様子(2022年4月11日 モルドバ キシナウ市)

ロシアからのウクライナ侵攻では隣国モルドバに仮設診療所を設置し、医師・看護師・薬剤師などによる医療支援や物資支援、避難所整備を行いました。

マウイ島訪問時の様子(2023年8月17日 マウイ島 コミュニティーセンター避難所)

また、ハワイ・マウイ島での山火事発生時には、日本の団体としていち早く、現地へのスタッフ派遣を行い、支援活動を行いました。

被災者の皆様の声を聞きながら、私たちだからこそできる支援を継続しています。引き続き安全を第一に活動していきますので、皆さまのあたたかいご支援をお願いいたします。

空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”ホームページ

空飛ぶ捜索医療団 災害時に本当に現場に届く支援を ふるさと納税で応援

寄付金の使いみち

災害発生時から復興まで、空飛ぶ捜索医療団の支援活動は多岐にわたります。
みなさまからのご寄付は、災害支援に必要な人や資機材の準備・維持およびそれらを活用した支援活動、現地での医療支援、地域住民の方々のための避難所設営、備蓄品では賄えない医療や衛生用品、食料などの物資購入等に使わせていただきます。

●皆様のご寄付が、次なる災害支援に役立てられます。
1. 緊急時、本当に現場に届く支援を
国内外における災害発生時に「一秒でも早く、一人でも多く」救うため、いち早く現場に駆け付け、レスキュー、医療、物資など、必要とされる支援を届けます。

2. あらゆる場面に適応した資機材や物資の調達を
必要な機材や物資を日ごろから準備・メンテナンスを実施。船舶や野営病院における実際の支援を想定した体制を強化し、被災地域の人々に貢献してまいります。

3. 医療を通じ、安心して住み続けられる地域づくりを
へき地の病院・クリニックの応援を継続。オンライン診療・オンライン面会、訪問看護などにも取り組み、地域の人々の健康を守ります。

●ご寄付の活用例
【1,000円】避難所生活にかかせない衛生キット2箱分になります
【3,000円】薬の継続が必要な方の緊急処方7日分になります
【10,000円】体ひとつで避難した人が3日間過ごせる避難セットになります
【50,000円】ヘリで患者1名を搬送した場合の平均費用7日分になります

※ピースウィンズ・ジャパンへの寄付は、寄付金控除の対象となります。
詳しくはこちら

※ピースウィンズ・ジャパン寄付金など取扱規程は下記をご参照ください。
特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン寄付金等取扱規程(PDF)

"#emergencyrelief"

活動情報

更新日:2024/12/26

【能登半島地震から1年】震災から二度目の冬。家電支援で暖を届ける(2024年12月26日更新)

石川県は、2024年1月1日の令和6年能登半島地震による甚大な被害を受け、倒壊した家屋等の公費解体に取り組んできましたが、震災の影響で申請されていた16市町の公費解体見込み数は、2024年9月の豪雨被害でさらに増加。公費解体棟の見込み数が想定を上回り、2024年12月12日には見込み数を来年1月に見直すことを明らかにしました。

仮設住宅への戸別訪問を行う空飛ぶ捜索医療団スタッフ(2024年3月、珠洲市)

また、本格的な冬を迎える今、珠洲市では仮設住宅の建設が急ピッチで進められています。市の発表では、建設予定とされている仮設住宅は全部で1,640戸。2024年12月20日に完成が予定されている仮設住宅を含めると、年内に1,531戸が完成する予定です。

新入居を見越して暖房家具を事前準備、家電支援を継続
仮設住宅に入居した方への公的支援では「洗濯機、冷蔵庫、テレビ、エアコン」を対象としており、そのほかの家電は対象外となっています。

仮設住宅への入居者は、主に居住していた家が「全壊」判定を受けている方など、被害が大きいため家電をはじめ生活用品を買い直す必要のある方ばかりです。2024年12月下旬に新しく仮設住宅に入居される方からの要望にすぐに応えることができるよう、ホットカーペットやこたつ、ファンヒーターなどの暖房器具をあらかじめ115世帯分の在庫を準備しました。

運搬が難しい方に家電を届けると笑顔で出迎えてくれた(2024年12月、珠洲市)

地域、家族構成だけではなく、季節ごとに変わる支援のニーズは、行政からの支援だけではどうしても「範囲外」とされる部分が出てきます。空飛ぶ捜索医療団は今後も行政との連携を強化しつつ、私たち民間団体だからこそ公的支援の手が届かない範囲も見極めながら、取りこぼしがないように「本当に必要な支援」を届けていきます。

近況を伺いながら、お宅まで家電を運ぶ(2024年12月、珠洲市)

活動報告はホームページにて随時更新しています。ぜひご覧ください。
【能登半島地震から1年】震災から二度目の冬。家電支援で暖を届ける
【能登半島地震から1年】誘発地震により心身への影響の懸念が続く奥能登

【令和6年奥能登豪雨】土砂災害の警戒が続く石川県珠洲市の現在の状況と支援活動(2024年10月10日更新)

【令和6年奥能登豪雨】また始めから……今も続く生活再建

2024年9月21日の豪雨によって流れ込んだ土砂や流れてきた大量の枝木を道の脇に集める作業などが、被災地の各所で続けられています。水害の発生から約2週間がたったこの日も珠洲市では雨天が続き、さらなる土砂災害などへの警戒が続いています。

田んぼの敷地一帯が土石流などで壊滅状態になった場所(2024年10月、珠洲市)

珠洲事務所現地代表の橋本は、なぎ倒された稲穂を前に、深い苦悩を語りました。「やっと何とか、生活が少しずつ元に戻りつつあると感じ始めていたんです。それなのに、この豪雨はあまりにも残酷でした。ただ家が流されたとか、何センチの浸水だとか、そんな話だけではありません。まるで私たちの生活の基盤と、これからの希望すらも根こそぎ奪い去られてしまったような感覚です」

新米の収穫の時期でもある9月。今年の収穫に対しての思いは、例年とは少し違うといいます。

地震の影響で生まれた多くの課題に向き合い、苗を育て、田んぼを耕し、田植えをして定期的に雑草刈りを行う……。日々つらい状況でも日常の仕事を続けること、そして、道行く人も田んぼ全体で輝き始めた稲穂の成長を見守ることが、心の支えにもなっていました。

収穫量がどこまで減少してしまうのか、まだ見通しもつかない状況です。

あらゆる機関と行政との橋渡し役を担い、被災地を支える

珠洲市関係機関全体会議に民間支援団体代表として参加している橋本(2024年10月、珠洲市)

私たち独自で行う支援活動と並行して、今でも珠洲市や県と連携し民間の支援団体などと被災地でさまざまな分野で支援を行っている多機関が、円滑に活動を展開できるよう、ハブのような役割を担っています。

その活動のひとつとして、珠洲事務所代表の橋本は、石川県珠洲市復興計画策定委員会有識者会議委員に任命され、復興計画へのコメントやアドバイスを行っています。
また、珠洲市の被災状況・復旧状況などが共有される珠洲市関係機関全体会議に民間支援を代表する形で参加。橋本は珠洲市で活動する民間支援の各団体に、現地での課題や必要な情報を伝え、それぞれが円滑に支援活動を進められるよう調整などを行っています。

【令和6年奥能登豪雨】現在の主な支援活動の内容
・仮設住宅への家電支援
・豪雨災害に伴う水・食料、生活用品などの物資支援
・保健福祉の観点での戸別訪問
・地元医療機関との連携による健康相談
・行政と各支援団体の連携サポート
※被災者への支援は在宅避難・避難所・仮設住宅を問わず行っています。

空飛ぶ捜索医療団は、行政でしかできない取り組み、私たち民間だからこそ実行できる取り組みが、歯車のようにかみ合うことでより一層、被災地を取り巻くあらゆる課題に向き合い、迅速に支援を行うことができると考えています。
被災者の方々の尊い命を守るために、支援者間の懸け橋役として、そして災害支援のプロフェッショナルチームとして、誰一人として取り残さない支援を届けます。

活動報告の全文はこちらから

【令和6年9月能登半島豪雨】水害から1週間。復旧に向けて力強く、珠洲市は前へ進む(2024年10月1日更新)

【能登半島豪雨被害】だれがなぜ、こんな試練を与えるのか

今年、2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震により甚大な被害を受けた奥能登地方に2024年9月21日、線状降水帯が発生。午前中から激しい雨が短時間で集中して降り続き、珠洲市、輪島市、能登町には最大級の警戒が求められる「大雨特別警報」が発表されました。

市内では、道路が冠水し、仮設住宅も含めた多くの家屋が浸水被害に遭い、一部エリアでは停電と断水が発生。各地で土砂災害も報告され、土石や倒木が道路を寸断し、孤立集落があらわれるなど、被害は広まっています。

2024年9月23日には、珠洲市からの協力要請を受け、広島県神石高原町の本部よりヘリコプターを出動。土砂や倒木が流れ込んで道路が寸断され、孤立した仁江地区に取り残された4名(60~80代の女性2名、男性2名)の救出に向かいました。

市、県とも連携し、孤立集落近くの道の駅から珠洲市の中心部近くまで無事搬送。4名とも特にケガなどはないとのことです。県の防災ヘリコプターもフル稼働しているなか、一秒でも早く孤立した方を救うために、今回は官民が連携して市から空飛ぶ捜索医療団に協力要請がありました。こうした迅速な支援活動は、2024年1月の震災の経験が生かされたといえます。

【#救助映像】能登半島豪雨で孤立化した地域からヘリで4名を搬送する一部始終をご覧ください。

水害から1週間。復旧に向けて力強く、珠洲市は前へ進む
震災から復興半ばの奥能登を襲った豪雨水害から1週間。珠洲市では市職員を中心として懸命な復旧作業が進められ、水害でダメージを受けたエリアも少しずつ落ち着きを取り戻しつつあります。空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”は、2024年1月から続けてきた避難所支援やコミュニティ支援とともに、物資や給水の緊急支援を行ってきました。

空飛ぶ捜索医療団が給水支援する災害用浄水装置も被害に。土砂に埋もれたホースを掘り起こし復旧させる作業を行う(2024年9月、珠洲市)

水害の発生後、一部エリアではふたたび断水が発生し、各避難所や在宅避難者には生活用水も含めた飲料水を届けることが急務とされました。こうした水が不足する事態を想定し、空飛ぶ捜索医療団は水と非常用トイレを早急に手配し、各避難所や仮設住宅、在宅避難者に配布しました。

また、土砂災害で道路が寸断され、しばらく復旧の見通しが立たないと判断されたエリアにはヘリコプターで取り残された住民を救助。そのほかの孤立集落をなくすために道路啓開が急ピッチで進められ、道路が陥没などして車両が入れないエリアには、市の職員と空飛ぶ捜索医療団のスタッフが歩いて直接出向いていくなど、もれのないように支援物資は被災者のもとに届けられています。

道路が陥没し車両が入れない地域には、歩いて支援物資は届けられた(2024年9月、珠洲市)

市職員をはじめ、支援者のなかには、被災者も多くいます。そうした方々と共に、私たちは支援活動を行っています。
能登半島豪雨被害への支援活動の全文は、空飛ぶ捜索医療団のホームページにて、ぜひご覧ください。

【令和6年能登半島地震】から半年。現在の被災地の様子と活動レポート(2024年7月5日更新)

避難所敷地内の地面の様子(2024年6月 石川県珠洲市)

奥能登を震源とした「令和6年 能登半島地震」の発生から半年が経過しました。空飛ぶ捜索医療団は珠洲市内を拠点に、現在も看護師をはじめとした支援チームが支援活動にあたっています。

仮設住宅、自宅避難、避難所生活など、暮らす場所は違っていても、災害から生き延びた人々の命を脅かす「災害関連死」。この大きな問題を防ぐためには今こそ、支援活動を強化していくことが重要です。

街で道路の復旧が進み、お店も徐々に営業を再開しはじめていますが、その一方で、がれきが撤去されていない地域や、いまだに断水が続いている地域など、被災地にはまだ多くの震災の傷跡が残っています。

被災者に寄り添った支援を続けてきたからこそ見えてきた、現在の被災者を取り巻く課題や状況をお伝えします。

活動報告全文はこちらから

【令和6年能登半島地震】被災地の小さな変化と、災害関連死を防ぐための支援(2024年3月4日更新)

空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”は、「令和6年能登半島地震」発災の翌朝に現地入りして以降、珠洲市を拠点に現在も支援活動を続けています。支援を続けている中で、避難所での被災者の方々の様子にも、徐々に変化がみられてきました。

【令和6年能登半島地震】避難所での小さな変化をご紹介します

【令和6年能登半島地震】避難所での小さな変化をご紹介します

発災以降、珠洲市では停電が続き、余震が続くなか寒く暗い避難所での生活が強いられてきましたが、電気の復旧や道路状況の改善がなされ、少しずつ日常が戻ってきています。子どもたちのために小学校が再開され、複数のお店も営業をはじめたほか、仮設住宅への入居もはじまりました。

建設された仮設住宅(2024年2月22日 石川県珠洲市)

珠洲市では全壊した家屋も多いなか、避難所もいつ閉鎖されるか分からないという状況が続き、不安を感じている被災者の方が多くいらっしゃいました。
しかし現在、空飛ぶ捜索医療団が立ち上げた「生涯学習センター(旧飯田保育所)避難所」では、長引く避難所生活を少しでも良いものにしようと、被災者の方々が積極的に避難所の運営に携わっている様子が見られました。

「これからどうなるか分からない・不安でたまらないと仰っていた被災者の方々が、避難所のリーダーになってくれている。その様子が本当に嬉しい、すごいなと思っている」
と、現地で避難所支援を行っている橋本笙子スタッフは話します。

避難所のホワイトボードに記載された運営の心得(2024年1月21日 石川県珠洲市)

被災者の方々の前向きな姿が見られる一方、空飛ぶ捜索医療団の避難所支援チームが継続して向き合っている大きなテーマが「災害関連死」です。

災害関連死とは、地震発生時に起きた家屋の倒壊や津波などの直接的な被害で死亡したのではなく、長引く避難生活における負担が原因で死亡に至ってしまうケースを指します。
例えば、精神的・肉体的な疲労が積み重なったことで高血圧になったり、それによって脳卒中や心筋梗塞、心不全を引き起こすような場合があります。

看護師を含む避難所支援チームの主な活動目的は、避難所の生活環境を整え、ストレスなども含めた疾病につながる要素をできる限りなくしていき、避難者の方々の健康を守ることにあります。
そのなかで支援活動を開始してから現在まで特に注力してきたのが、トイレの衛生管理です。

被災地で断水が発生した場合、トイレで用を足しても水で流せないことから不衛生な状態となり、感染拡大の温床となってしまう可能性があります。そのため各避難所では、使用する度にトイレに袋を設置して汚物ごと取り除く「簡易トイレ」が使用されていますが、簡易トイレの使い方が分からない方や、「汚い」「さわりたくない」と、処理をためらう方が多くみられました。

避難所支援チームは、こうした感染対策の重要な施策としてトイレ環境の改善に取り組み、エプロンと手袋を配布したり、簡易トイレの使い方やトイレ掃除の指導などを行ったりしてきました。

簡易トイレを設置した避難所内のトイレ(2024年1月21日 石川県珠洲市)

また、トイレ問題は感染拡大のリスクだけでなく、健康被害につながる可能性もあるといわれています。例えば、トイレの処理が面倒だからと水分をとらなくなった結果、脱水症を発症。その状況が続くことで血行不良が起こり、エコノミークラス症候群や脳梗塞、心筋梗塞を誘発してしまうおそれがあります。

それらを防ぐため、避難所支援チームは定期的に避難所を巡回し、血圧を測定するなど、避難者の健康状態を随時確認。高血圧が確認された方は医師につなぎ、診療してもらう仕組みも確立しています。
また、日常的なコミュニケーションを通して日々の不安やストレスを少しでも和らげながら、水分補給の重要性や、避難所にある食料で栄養を取る工夫の仕方なども伝え、自身の健康管理を意識してもらう啓蒙(けいもう)活動も行っています。

避難所内を巡回し診察にあたる(2024年1月28日 石川県珠洲市)

こうした健康を守る支援は物資支援とも連動しており、空飛ぶ捜索医療団が多くの企業と連携して提供している物資のなかには、避難者の健康を守る支援物資も多く含まれています。

雪の降る中、届いた支援物資を配布(2024年1月26日 石川県珠洲市)

例えば、皮膚の乾燥を防ぐためのボディクリームや、水分補給の不足から懸念される便秘対策として乳酸菌入りの飲料などを配布。また、体育館などで床にじかに寝ることでほこりを吸ってしまい、呼吸器感染症を発症する可能性があるため、底上げのための段ボールベッドも導入しました。

衛生管理や診療、健康相談だけでは、災害関連死を効果的に防ぐことはできません。空飛ぶ捜索医療団では、医療支援、物資支援を個別に機能させるのではなく、避難所支援を軸にそれぞれの支援を有機的に連動させることで、最大限に災害関連死を防ぐ対策を行ってきました。

避難所生活において健康を維持することは決して容易なことではなく、感染拡大や災害関連死を防ぐためには、避難者とともにできることを一つひとつ継続して実施していくしかありません。そのためには、長期的な支援が必要です。
引き続き、必要な人々に必要な支援を届け続けるために、皆様のあたたかいご支援をお願いいたします。

【令和6年能登半島地震】発災から1週間 あの日の想い(2024年1月26日更新)

令和6年能登半島地震発生から26日がたちました。ピースウィンズが運営する災害緊急支援プロジェクト「空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”」は、皆様のご支援のおかげで多様な支援を行うことができました。
空飛ぶ捜索医療団のプロジェクトリーダー稲葉医師は、発災から1週間の想いを語ります。

【令和6年能登半島地震】緊急支援DAY0からDAY7までのご報告

2024年1月1日16時10分、令和6年能登半島地震が発生。同日、緊急支援チームは被災地域の一つである現地、石川県珠洲市に向け出発しました。
珠洲市の避難所に到着したのは、発災から約24時間後。その避難所に最初に到着した私たちに、ご自身も被災者でありながら調整本部長として現場を任されていた女性は「先生たちが来てくれて、涙が出た」と話してくれました。

緊急支援チームと合流した調整本部長(2024年1月2日 石川県珠洲市)

今回の緊急支援では、「陸」「海」「空」全方向からの支援が行われました。

【陸の支援】
空飛ぶ捜索医療団は、発災2日目から未治療死を防ぐために、珠洲市総合病院と連携し、周囲の電気もトイレもない避難所にて診療にあたりました。

2024年1月6日、倒壊した家屋から90代の女性が救出され、救急車で搬送されました。地震発生からおよそ124時間がたった出来事で、この奇跡ともいえる救出において救助医療処置を担ったのが、稲葉医師です。その奇跡の瞬間を、稲葉医師が振り返りました。
「いろいろな災害医療を続けてきたけれど、ここまで完璧に処置ができた上で救出できたのははじめて。ほかでもあまり聞いたことがない。警察、消防、医療が連携して、いろいろな奇跡が重なった結果です」

稲葉医師と看護師が処置を施す様子(2024年1月6日 石川県珠洲市)

医療支援と並行して、捜索活動も進められました。
現場に入った災害救助犬「ロジャー」はハンドラーとともに倒壊した家屋で捜索活動を行いました。
ロジャーは人の気配に反応し、レスキュー隊が懸命の救助にあたりました。
残念ながら、発見されたはじめの1名は既に息を引き取られていた状態でした。その後も捜索を続け、女性1名を無事に発見・保護し、病院に搬送することができました。

災害救助犬ロジャーによる捜索救助活動の様子(2024年1月3日 石川県珠洲市)

【海の支援】
大きな被害のあった珠洲市内には、いまだ大型トラックによる陸路でのアクセスが難しい状況です。
そこで、空飛ぶ捜索医療団の船舶「豊島丸」は、家屋の倒壊や土砂災害が激しい沿岸部のエリアを中心に、水や食料をはじめ、生活用品を届けました。
冷たい雨と雪が降り続き、寒さが一段と厳しくなっている現地でニーズの高い、灯油やカイロなども運びました。
「豊島丸」は、ピースウィンズが所有する前、阪神淡路大震災の被災地支援の救援航海や西日本豪雨災害支援活動などを行った実績がある船です。

支援物資を積んだ船が飯田港に到着(2024年1月5日 石川県珠洲市)

【空の支援】
空飛ぶ捜索医療団は、ヘリコプターを駆使して救急患者の搬送、被害状況が激しい北部沿岸を中心に調査を進め、孤立集落への医療支援も行いました。
地震、津波の影響で道が寸断され、車両が入れない孤立集落、馬緤町(まつなぎ町)へ訪れた時には、高齢者が多く、体調不良や、常備薬の不足といった健康に関する不安を持つ方が多くいらっしゃいました。

そこで、その場で急きょ、段ボールを積み上げて臨時診療所を開設し健康相談にあたることにしました。
診療所を訪れた80代の女性は、「常備薬も少なくなってきて、本当は今日病院に行く予定でしたが行けなくて、どうなるのだろうと心配していました。そこに先生が来ていただけて……本当にほっとしています。ありがとうございます」と笑顔で話してくれました。

ヘリコプターで孤立集落に向かう稲葉医師(2024年1月6日 石川県珠洲市)

2023年5月に能登半島で起きた地震の際にも、空飛ぶ捜索医療団は緊急支援チームを派遣、避難所支援や物資支援、部会立ち上げ支援なども行った経験があります。
その時の経験を活かし、すぐに珠洲生活サポート部会の運営支援を空飛ぶ捜索医療団の本部指揮所スタッフが担い、医療保健部門をサポートすることができました。

このような支援活動は、皆様から寄せられたご寄付、そして、現地でともに支援に携わっている方々の「一緒に頑張ろう」という協力があってこそ、できたことです。皆様の多大なるご支援に感謝いたします。

引き続き、必要な人々に必要な支援を届け続けるために、皆様のあたたかいご支援をお願いいたします。

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認定特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン

認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、紛争や災害、貧困などの脅威にさらされている人々に対して支援活動を行うNGO (Non-Governmental Organization = 非政府組織)です。日本に本部を置き、これまで世界36の国と地域で活動してきました。また東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨、2023年のトルコ地震へも出動し、支援を行いました。

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