寄付受付開始日:2019/07/18
更新日:2024/03/18
2011年から続くシリア危機により、現在1,100万人のシリアの人々が食料や生活物資、住居の修繕など何らかの支援を必要としています。現地では攻撃やテロが散発的に続いているだけでなく、長期にわたる情勢不安とシリア周辺国の経済危機によってシリア国内の経済も悪化し、さらに2020年の春からは新型コロナウイルスの感染が増えています。国連は、これらの状況を受けてシリア国内の約80~90%の人々が貧困に陥っており、食糧危機など人々の状況はさらに悪化する危険性があると、警鐘を鳴らしています。
ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は現地の提携団体と協力し、2017年1月からシリア支援をおこなっており、2019年度は9,362世帯に食糧を、4,558人の子どもたちに冬服を届け、250世帯の住居と学校2校を修繕しました。
PWJが修繕した学校の校長先生からのコメントをご紹介します。
「戦闘が落ち着くと、日常生活が戻ってきました。けれど、学校は破壊されていて、校舎の窓ガラスはなく、天井には大きな穴が開いていて、授業にふさわしい状況ではありませんでした。そのため、多くの生徒たちは、遠くの学校に通わなくてはなりませんでしたが、校舎が修繕され、備品もそろったので、生徒を迎えることができるようになりました。子どもをこの学校に入学させようとする親も多く、おかげで生徒の数が増えています。」
PWJでは、新型コロナウイルスが猛威を振るったこの夏以降、感染予防のためハンドサニタイザーや石鹸などの衛生用品の配付も始めました。厳しい環境に置かれているシリアの人々のために、みなさまからの温かいご支援をよろしくお願いいたします。
2011年3月に勃発したシリア危機の影響を受けた人々への人道支援実施のために使用させていただきます。また、調査や物資購入の際に発生した費用としても使用させていただく予定です。
なお、さまざまなサポートをするためにご寄付のうち最大15%は運営費(事務所の管理運営費、調査・提言活動のための費用など)として活用させていただきます。また、今回の支援が終了した場合、今後のレスキューおよび被災者緊急支援の準備に活用させていただきます。
更新日:2024/03/18
ピースウィンズは、シリアで1年以上かけて、女性や子どもたちへの心のサポート事業を行ってまいりました。2011年のシリア危機以降、多くの人々が住むところを転々としながら厳しい生活を続けており、状況は年々悪化しています。2023年2月には、トルコ・シリア地震が発生、多くの建物が倒壊し、被災者は880万人を超えました。国連のデータによると、カウンセリングやワークショップなどの心のサポートを必要とする人の数は、地震後に少なくとも22万人以上増えています。
そこで、ピースウィンズは、シリアのコミュニティーセンターで、女性や子どものストレスを減らすためのワークショップを行い、これまでに1,000人以上が参加しました。ワークショップでは、リラクゼーションの方法やポジティブなコミュニケーションの取り方、問題への対処方法などについて、仲間と一緒に人形劇やディスカッションを通じて学びます。また、女性たちを対象としたモザイクや機織りなどの伝統工芸を学ぶことで心の安定をはかるコースも実施しました。
2023年11月、ワークショップに参加した女性と子どもたちは、遠足にでかけました。子どもたちは、「芝生のある運動場はこれまでに見たことがなかった」、「遠足に行くのは人生初めてだ」と口々に語り、さまざまなアクティビティを楽しみました。また、交流会をかねて大きなレストランへ行った女性たちからは、「レストランに行かれてとても嬉しい」、「一緒にワークショップを受けた仲間たちと交流する一生の記念になった」などの声が聞かれました。
今まで学んできた成果を発表したり、歌ったり、踊ったり、彼らにとって特別な一日となりました。
ピースウィンズはまた、モザイクと機織りを習った女性たちが作品を発表する展示会も企画しました。展示会には、女性たちの作品がずらりと並び、400人以上の人々が力作に見入りました。この様子は、テレビや新聞等でも数多く報道され、大きな反響を呼びました。
作品を出展した女性たちは、「伝統工芸を学ぶ機会に恵まれたことがとても嬉しい」、「技術を身に着けたことによって就職することができた」、「家にいるだけの生活だったのが、芸術家として活動できるようになり、自分に自信が持てるようになった」など、笑顔で語りました。
1年以上かけて実施したこのプログラムは終わりましたが、地震以降、さらに増えている地域や家庭での暴力を防止していくために、ピースウィンズは新たに保護者と子どもたちに対する心のサポートワークショップを、同じく2023年11月から開始しました。その様子は、また改めてお届けできればと思います。
シリアでは、コレラの発生が確認され、COVID-19感染への不安に加え、コレラ感染への不安も広がっています。ピースウィンズは、この状況を受け、コレラおよびCOVID-19感染拡大防止のため、石鹸(せっけん)やマスクなどの衛生用品の配付と啓発セッションを行っています。
同セッションは、参加者にCOVID-19とコレラに関する間違った知識について気づいてもらえるような内容にしており、セッションの最後には事後テストも行っています。この事後テストでは、ほとんどの参加者が正しい知識を身に着けていることが確認されています。
セッションを受けた女性に、インタビューしました。マルワさん(仮名)は、「私は、戦争で夫と息子の一人を失い、残った息子たちも兵隊として取られました。家には男手がなく無収入のために、子どもが通学するために必要なペンの一本すら買ってやれない状況です。啓発セッションでは、感染対策だけでなく、ストレスを軽減するためのストレッチや呼吸法について学び、久々にリラックスしました。家でも実践したいです」と語りました。
ファティマさん(仮名)は、「公務員だった夫は年老いたため、退職しましたが、退職金はたったの7ドルで、それすらまだ支払われていません。うちには、7人の子どもがいますが、収入がないため、基本的なものも買えず、調理に必要なガスが一カ月半もないままで、サラダオイルも20日以上、ありません。あまりに物が高くて何も買えないので、何日買うことができなかったか、記録するようにしています。
子どもたちは栄養不足のためにやせ細っており、私と夫は慢性疾患をかかえていますが、病院にいく費用も出すこともできません。啓発セッションに参加して、万が一、家族が感染した場合の緊急の対応方法について学ぶことができて、本当に良かったです。石鹸(せっけん)やマスクも自分ではもうとても買うことができないので、役立ちました。定期的に、配ってくださるととても助かります」と仰っていました。
シリアでは、長引く経済危機に加え、ロシアのウクライナ侵攻に伴って物価の激しい値上がりが見られています。
さらに、2022年12月に入ってから、突如、2011年の内戦が始まって以来、最も深刻な燃料不足になり、バスといった公共機関も機能していない状態です。燃料をはじめ、全ての物価が値上がりした中、寒い冬がシリアを襲います。燃料も冬服も買えず困窮する人々の状況に対して、ピースウィンズは今後もできる限りの支援活動を続けていきます。
今年も皆様、あたたかいご支援をよろしくお願いいたします。
「この状況について、もう何と言っていいのか、途方に暮れています。何もかもが値上がりしてしまって、パンさえ買うことができない。どの家庭にとっても、パンは最も大切な食べ物なんです。それすら、買うのが難しい。毎日の生活に必要な物も買えないまま、物価だけが記録的に値上がりしているのです。うちの孫は、肺炎にかかっていて、毎月、薬を買う必要があるんですけど、それを工面するのに苦労しています」と語るのは、ヒバさん(仮名)です。
「これを見てください。野菜をこうして乾燥させて、少しずつ調理して子どもに食べさせているのです。これが唯一の朝食という日もあります。いつの日か、子どもたちが安心して暮らせるような日が良い日が来るといいのですけれど」
シリアでは今般の物価高騰によって、ヒバさんだけでなく、多くの人々が十分な食料を入手することが困難な状況になっています。ピースウィンズでは、こうした危機に対応するために、緊急支援を実施することにしました。スーパーマーケットで食料と引き換えることが可能なバウチャーを配付し、人々が新鮮な野菜や果物、必要な食料品を入手できるよう支援をしていきます。
「将来に何の希望も持てない。シリアにいて、どんな夢を描けばいいっていうんだろう。そんな風に語る若者が大勢います。生活は苦しく、その日、その日を何とか生きながらえているけれど、心は壊死したように感じているのです」と、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)とともにシリアで支援を実施している提携団体の臨床心理士は語ります。内戦から11年以上の月日がたっても、事態はちっとも良くなりません。
避難を繰り返しては、日々を暮らすのに精一杯で疲れ果ててしまった若者たちが、貧困地区にある提携団体の運営するコミュニティーセンターに大勢やってくるとのことです。
このような状況を受け、PWJは、精神科医、臨床心理士、ソーシャルワーカーたちと一緒に、シリアの人々が心の傷跡を乗り越え、厳しい現状の中でもともに支えあって生きていくことができるような心のケアワークショップの実施を計画しています。
アートや音楽、手工芸など、さまざまなプログラムを通じて、貧困地区の人々が集ってともに苦難を乗り越えていくような内容にする予定です。また、ワークショップが始まったら皆さんにお伝えできればと思います。
シリアに住むカーリッドさん(仮名)は修復された家の前で話しました。シリア内戦が激しくなった2013年、カーリッドさんは、妻と幼い3人の息子を連れ、命からがら別の土地に避難しました。
慣れない避難生活を6年間続けた後に、懐かしい故郷の家に帰ってきましたが、爆撃により自宅は破壊されていました。そのため、国連から提供された毛布やビニールで壊れた箇所を覆いながら、3年以上もの間、ドアも窓もない家で暮らしてきました。
私たちピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、カーリッドさんのような、内戦後に避難して地元に帰ってきた人々のうち、戦闘で破壊された家に住んでおり、収入がない世帯に対して、修復工事を行いました。対象は、提携団体を通じて調査を行い選定した100世帯で、工事内容は各家屋で異なります。
カーリッドさんのおうちの場合は、新しくドアと窓を設置し、各部屋の間に敷居がなかったので、部屋の間に内ドアを取り付けました。また、必要な水を得るための水タンクや温水設備、水道栓もなかったので、それらを台所とお手洗いに取り付けました。さらに、防犯対策として、窓の横に鉄のフェンスも設置しました。
修復工事を終えた後の家の中で、カーリッドさんは、こう語りました。
「今まで、玄関扉がないために、いつ誰が家の中に侵入してくるかわからず、夜もなかなか落ち着いて眠ることができませんでした。でも、今ではドアがある上に、窓も開閉できるようになったので、ようやく安心して過ごせるようになりました。これまで、水を確保するのも一苦労でしたが、それからもやっと解放されましたし、お湯を使ってシャワーを浴びることもできるようになりました。自分の生活に尊厳が戻ってきたのを感じます」
世界で最も多くの難民を出したと言われるシリア内戦は、日本の皆さんにとっては遠い昔に聞いた出来事のように思われるかもしれません。2011年3月に突如始まったシリア内戦から早11年以上の歳月がたちましたが、いまだに590万人が国内で安全な場所を求めて避難生活を送り続け、女性と子どものうち3分の2は避難生活を強いられています。
2022年時点で、シリア全土で支援を必要とする人々は1,460万人にのぼり、さらに新型コロナウイルス感染拡大と経済危機によって、人々はより一層苦しい生活を強いられるなど、今でも内戦の影響は深刻です。
特に最近は、ロシア・ウクライナ戦争のあおりを受け、全ての物価が激しく値上がりしました。例えば、サラダ油の値段は2019年1月時点に比べると、2022年2月時点でなんと25倍以上に値上がりしています。
「昨日も、小麦とサラダ油を買うのに店の前で2時間、並んだよ」と、コミュニティーセンターに来た人々は口々に言います。同国には、「スマートカード」と呼ばれる、一般世帯主(旅行者、外国人などは除く)を対象としたカードがあります。これを持っている人は、ガソリンや食糧を、各地域にある政府指定のお店で、定価よりも安く購入できます。例えば、サラダ油は、定価で約15,000シリア・ポンド(約800円)ですが、「スマートカード」を持っていれば約8,200シリア・ポンド(約440円)で購入できるのです。
この「スマートカード」を認証させるためには、戸籍やIDカード、居住証明書など、複数の書類が必要です。しかし、国内で避難を続けたためにこれらの書類を失った人々もおり、「スマートカード」にアクセスできなくなってしまった人もいます。
さらに、2022年2月1日には、シリア政府は、少なくとも50万人以上をスマートカードの補助対象から外すと通達し、38万人がそれに対して苦情を訴えています。また持っていたとしても、購入できる量も、政府指定のお店の数も非常に限られています。お店では常に品薄の状態が続いており、購入するためには2時間も3時間もお店の前で並ばなければいけません。
一方で、高齢者や妊婦など、長時間お店に並ぶことができない人や「スマートカード」を持っていない人は、どうするのでしょうか。価格が2倍程度する政府指定以外のお店や闇市場で購入するしかありません。物価が激しく値上がりする中、人々の暮らしはますます大変な状況になっています。
このような状況を受け、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、シリア国内の3カ所で2021年の秋から2022年の春にかけて、4,050世帯に対する食糧配付とコロナ対策としての衛生用品の配付を行いました。
苦しい生活を強いられるシリアの人々のため、PWJは食糧配付や衛生用品などの支援を継続してまいります。引き続きの応援をよろしくお願いいたします。
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認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、紛争や災害、貧困などの脅威にさらされている人々に対して支援活動を行うNGO (Non-Governmental Organization = 非政府組織)です。
日本に本部を置き、これまで世界33の国と地域で活動してきました。また東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨の際にも出動し、支援を行いました。
このプロジェクトでは領収書の発行をおこなっておりません。
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