寄付受付開始日:2017/10/31
更新日:2024/05/31
「2017年8月のある朝8時、村に70人ほどの兵士が来ていきなり家々に火を放ちました。多くの人が刺殺されました。村のそばに流れている川に死体が放り込まれていきました。川は死体の海でした。」(18歳女性の証言)
2017年8月25日以降、74万人以上の人々がバングラデシュに避難してきました(国際連合人道問題調整事務所-UN OCHA発表、2019年4月23日現在)。
新しく流入してきた難民たちは、1970年代後半からの度重なる迫害から逃れてきた数10万人のロヒンギャ難民たちが暮らすキャンプの周辺に、雨風をしのぐ簡易テントを張って生活しており、合計で90万人以上のロヒンギャ難民の人々が支援を待っている状態です。
難民たちのほとんどは女性、子ども、そして高齢者で、非情に過酷な経験をし逃れてきたために深い心の傷を負っています。迫害や暴力からは逃れられたものの、今なお厳しい環境の中での暮らしが続いています。
世界の医療団日本(メドゥサン・デュ・モンド・ジャパン/MdMJ)は、2017年12月からバングラデシュでロヒンギャ難民の中でも特に医療アクセスが限られた人々に対して、緊急医療支援のプログラムを開始しました。
2018年9月からは、長期化するキャンプ生活、次第に薄れていく国際社会からの関心、手薄になる支援などの新たな状況を受け、支援対象を女性や子どもからコミュニティーの住民全体に広げ、保健衛生教育をはじめとした自立支援をはじめました。
今、難民キャンプでは「基本的な衛生管理方法」や「家族計画」がよく問題になっています。
長期化するキャンプ生活の中で、ジェンダーに基づく暴力被害、心理的ケアが必要な方への対応、悲惨な状況を経験してきた人たちへのきめ細やかなケアが求められており、「月経衛生管理」など日常的課題も目に付くようになりました。
ロヒンギャの人々が長年置かれてきた環境や慣習に加え、過去に追った傷、将来への不安、キャンプ内のストレスの多い生活環境、生産的な活動の欠如など、すべてによってもたらされるぜい弱性が要因となり、さまざまな問題が起きています。
世界の医療団は、こうした一つ一つの問題を解決するために、単なる医療の提供ではない自立支援を展開しています。
各コミュニティーにヘルスプロモーターとなる人材を育成し、それぞれのニーズに基づいた保健衛生教育を実施、コミュニティー内で特に発信力や影響力のある14歳から17歳の青少年への教育活動を行うことで、傷ついたコミュニティーを回復し自分たちの力で健康や災害に対峙(たいじ)する力を育んで行きます。
一度負った心の傷を癒やすには、長い年月が必要です。
問題が長期化する中で、世界から取り残され、医療から疎外されることがない様に。世界の医療団は、最後までロヒンギャの人々を支援し、寄り添います。
ロヒンギャ難民コミュニティ支援プロジェクト
この度は世界の医療団をご支援いただきましてありがとうございます。頂戴いたしましたご寄付は、バングラデシュにおけるロヒンギャ難民への医療支援活動に使わせていただきます。
最新の活動状況は世界の医療団ホームページやフェイスブックでもご紹介しています。ぜひご覧ください。
※「つながる募金(ソフトバンク)」で寄付をいただいた場合、上記の記載にかかわらず、当団体の活動全般への寄付となります。
更新日:2024/05/31
2023年3月から新たなフェーズへ
バングラデシュ南部、コックスバザール近郊にあるロヒンギャ難民キャンプと、周辺のホストコミュニティーで実施している非感染性疾患(NCDs)の予防啓発活動。2023年3月中旬からは、非感染性疾患のリスクのある20歳以上の成人、すでに罹患(りかん)している40歳以上の成人、それぞれを身近で支えている近親者や家族を対象に実態調査を開始しました。
日本同様、不健康な生活習慣の積み重ねによる高血圧や糖尿病、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患などの非感染性疾患が問題となっているロヒンギャ難民と、周辺のホストコミュニティーの人々。聞き取るのは、食生活や運動習慣、たばこなどの嗜好品(しこうひん)の利用習慣や、家族間のサポートの状況です。
保健ボランティアが、活動地域の家々を訪問し、質問票に沿って聞き取りを行っています。この調査結果は、この後実施する健康教育の効果を測るために必要な大切な基礎データになります。
御礼メッセージ
皆様、いつもご支援いただき感謝申し上げます。世界の医療団の医療コーディネーターの木田です。ロヒンギャ難民危機は長期化し、帰還の見通しはたたず、支援金は年々減り、食料配給の手当も減額しています。約3年ぶりにキャンプを訪問しましたが、難民からは「絶望的」(hopeless)という声が聞かれます。引き続きのご支援をお願いします。
非感染性疾患についての啓発
非感染性疾患とは、いわゆる生活習慣病のことです。日本と同様、ロヒンギャの人々にとっても不健康な生活習慣の積み重ねによって、高血圧や糖尿病、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患などの非感染性疾患が問題となっています。
また難民キャンプでは健康に関する正しい情報を得るための手段や機会が限られています。とくに女性は教育や外出の機会の制限により、情報にアクセスすることがさらに困難な状況におかれています。
世界の医療団の保健ボランティアは、非感染性疾患の罹患(りかん)リスクが高い40歳以上の人々やその家族構成員に対して個別訪問を行い、健康教育を提供しています。ロヒンギャ難民、とりわけ女性の識字率は低く、健康教育の際にはイラストや写真付きの視覚教材を活用しています。
また外出することが難しい女性や身体障害のある高齢者のために室内でできる体操も紹介しています。
現地の人々からは、「塩分や油のとり過ぎが高血圧によくないってわかったよ」「こんな情報、今まで聞いたことなかった」「これからは自分も家族も非感染性疾患にかからないように予防していこうと思う」「室内でできる体操があるって(隣人から)聞いたんだけど、教えてくれない?」といった声が聞かれています。
非感染性疾患は慢性的に経過するため、不健康な生活習慣を改善し、これをいかに継続できるかが鍵になります。今後もロヒンギャの人々が健康的な生活習慣を継続できるよう地道な支援を続けていきたいと思います。
非感染性疾患についての啓発
日本でもそうですが、ロヒンギャの人々にとっても脳卒中や心筋梗塞、糖尿病などの非感染性疾患が問題となっています。
高齢の人々などから「しんどいんだけど、なぜだか分からないんだよね」といった声が聞かれます。適切に医者にかかっていなかったり、薬をもらってもちゃんと服用していなかったり、複数の同じ薬を飲んだりしているという例が見られます。また、運動の習慣がない人も多いです。食事に気をつけることも必要です。
こうした状況に対して、非感染性疾患にかかっている人々や、り患リスクが高い40歳以上の人々に対してボランティアが家庭訪問して、適切な食事内容・生活習慣、運動の重要性、診断を受けることや服薬などについて啓発しています。
人々からは「喫煙や油の使いすぎが体に悪いなんて知らなかった」などと聞きます。この啓発には家族にも立ち会ってもらい、正しい知識を得てもらって、家族をよりよく支えられるように支援します。
また、こうした家族の人々が集まって情報交換したり、適切な助言を受けたりする家族会も開催します。
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Médecins du Monde(メドゥサン・デュ・モンド)は、1980年に仏パリで設立された国際NGOで、世界各国に医師・看護師等のボランティアを派遣するほか、現地の医療システムの構築や復旧を支援し、皆が基礎的医療へアクセスできるよう活動しています。また、状況を改善すべく、多くの人に現状を伝える「証言(アドボカシー)」活動も行っています。1995年の阪神淡路大震災の際にフランスから緊急医療支援チームが派遣されたことを機に日本に設立された世界の医療団(メドゥサン・デュ・モンド ジャポン)も他の世界15カ国にある拠点と共同もしくは単独で人道医療支援活動を国内外で実施しています。
このプロジェクトでは領収書の発行をおこなっておりません。
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