• 日本に住みながら、日本語をしゃべることができない外国にルーツを持つ子どもたちに無償の日本語教育を続けています。(写真:GARDEN)

  • 概要
  • 活動情報 2017年4月10日 更新

日本語指導が必要な子どもは全国に37000人 一人ぼっちで社会から孤立する状況を「無償」の日本語教育で救いたい

■教室で孤立する子どもたちを救うために
はじめまして。NPO法人青少年自立援助センターの田中宝紀(いき)です。東京都福生市で、外国にルーツを持つ子どもたちに専門の日本語教育を行う「YSCグローバル・スクール」を運営しています。

全国の公立学校には、日本語がわからない子どもが37000人以上います。(文部科学省2014年)幼少期に海外にいたり、家族との会話が日本語でないためです。授業ではただ座っているだけになり、友達をつくることが難しい。日本語教育が必要な子どものうち約7000人は、人手不足から指導が受けられていません。いわゆる「言語難民」と呼ばれる子どもたちです。

私たちはこうした外国にルーツを持つ子どもたちに日本語教育を提供し、18カ国・400名を超える子どもの進学をサポートしてきました。

YSCグローバル・スクールには、フィリピンや中国、ネパール、ペルーなどからの子どもたちがいる
 

特に、働く場や家族の問題で経済的に余裕がない親たちは日本の公立学校に子どもたちを通わせる以外の選択肢がありません。また、外国人の母親が日本人男性と離婚し生活保護を受けているケースなどもあり、そうした家庭の子供たちが安心して日本語教育を受けられるように「無償」で専門の日本語教育を受けられる環境を提供してきました。

また、子どもたちだけではなく、外国人の親向けに、学校の先生たちとコミュニケーションを取るのに必要な簡単な日本語や習慣についてレクチャーする講習会なども開いています。

小学校入学を控えた親たちへのサポートプログラムには難民申請中の外国人も

■きっかけは、フィリピンで一人暮らしの高校時代。話しかけられたのが温かかった。
小中学校時代いじめに苦しんだ私は、父親の勧めで16歳のとき、単身でフィリピンの公立ハイスクールに留学しました。言葉も文化もわからないフィリピンの田舎で、たったひとりの「外国人」であった私を支えたのは、現地の方々のやさしさとあたたかさでした。一歩町に出れば、見知らぬ誰もが私に声をかけてくれるほどで、安心して過ごすことができました。

フィリピンでの留学時代

帰国後、フィリピンにルーツを持つ中学生と出会ったことが、全ての始まりです。彼女は来日後すぐに中学校に転入したものの、日本語がしゃべれずに不登校状態に陥っていました。

はじめて垣間見た、日本に暮らす外国にルーツを持つ子どもの現状に、私は衝撃を受けました。あんなにあたたかで、やさしさにあふれたフィリピンからやってきた子どもが、日本でこんなに冷たい環境に置かれているなんて、寂しくてたまらないのではないか、と。そしてこうした子どもたちはきっと、彼女ひとりではないのではないか。


■「言語を失うと、自分を失う」私たちが向き合う社会問題

一方で、こうした日本語の力が不十分な子どもたちが適切な日本語教育を受けられる機会は地域格差が大きく、学校内で何らかの支援を受けている場合でも、担当者が子どもの日本語教育に関する知識をまったく持っていなかったり、ごく限られた時間数しか支援を受けられない場合が少なくありません。

高校受験を控えた子どもたちの教科学習を支援する専門プログラムも

私たちは、昨年から、教室での日本語教育だけではなく、オンラインを使って全国の子どもたちを支援する取り組みを始めました。「言語難民」を少しでも減らしたいという思いからです。

言葉を失い、コミュニケーションさえままならず孤立した中で成長すると、自分を失ってしまいます。専門的な言語教育を受けられないことで、会話はできても相手や自分の心の内側を理解するような深い思考を重ねることができず、アイデンティティーを確立できずに社会からドロップアウトしてしまうケースも少なくありません。

そうした子どもや若者たちが、引きこもりになっていったり、暴力的になっていくことは日本社会にとってもリスクを高める結果につながります。

今、日本で働く外国人の数が急増しています。届出があるだけでも昨年、初めて100万人を突破し、2020年に向けてその数はさらに増えると見込まれています。こうした状況を受け、今後、外国にルーツを持つ子どもたちへの適切な教育支援の枠組みを整備することはとても大切な課題だと思っています。

■子どもたちにとっての居場所としての日本語教室
「以前、私はずっと友達を大切にしていた。でも今はみんな離れました。私も頑張った。私も皆さんと一緒に遊びたい。でも本当に一人で寂しくて、恥ずかしいです」

これは、去年5月に中国・吉林省から来日したゾウ・フォーン君(16)の言葉です。高校受験に挑戦するため私たちの教室に通い始めました。

中国から来日し、授業を受けるゾウ・フォーン君

父親が東京・池袋にある中華料理店で働くため家族を連れて来日、当時、フォーン君は日本語をほとんど話すことができませんでした。将来の夢は鉄道会社で運転士になること。高校への進学は夢をかなえるために必要不可欠。フォーン君は八王子市立の夜間中学に通いながら、私たちの教室で日本語の勉強を重ねてきました。語彙(ごい)や文法を学ぶだけではなく、日本語の細かなニュアンスを使い分けるのに必要な、日本の習慣や文化、自然、歴史なども合わせて教えます。

なかなか友達ができず、寂しさを募らせるフォーン君は、時折SNSにつらい心情をつづったりもしていましたが、そうした書き込み一つ一つにもコメントをつけるなどして精神的な支えとなることを目指し、彼の受験をサポートしました。

フォーン君を抱きしめ、励ますYSCグローバルスクールの講師たち

教室では日々こうした講師と生徒との交流が続いています。全国で孤立する子供たちを支援するため昨年からはオンライン学習システムの実験的導入も始めましたが、今年はさらに経済的な理由で学校に通えない子どもたちの支援を拡充するため、新たに無償枠を増やすことを決めました。予算の都合でいったん取りやめていた、送迎サービスの再導入も計画しています。

一人の生徒が、日本語が話せるようになり、学校生活を主体的に送ることができるようになるまでの期間は約1年。高校受験を控えた中学生への支援で一人あたり約20万円あれば全てのコストを賄うことができます。毎年、私たちが支援している子どもたち約100名のうち、約25%が生活困窮・外国人ひとり親世帯に暮らしています。今年は、こうした子どもたちのために、最低でも20人~25人分程度の無償枠を確保する計画で、そのための300万円を調達するため発信を始めています。

社会から見落とされがちなこの問題に、ぜひ、多くの人たちの関心が寄せられ、継続的なご支援をいただければと願っています。ぜひ皆さんのお力をお貸しください。

【2016年度支援実績】
生徒数:98名(オンラインでの受講含む)
年齢:6才~30代
ルーツ:フィリピン、中国、ネパール、ペルー、バングラデシュなど12の国と地域
奨学金利用者:24名(無償枠・減免合わせて)

【2016年度の主な活動】
・YSCグローバル・スクールの運営(年間200回+特別講習)
・NICOプロジェクトの運営(下半期~)
・サタデースクールの運営(年間54回)
・運動会、サマーキャンプ、地域祭り模擬店出店、文化祭などの行事実施
・キャリア教育プログラムの実施
・情報発信の実施
(NHK、日経新聞、Japan Times、Yahoo!ニュース個人、SNS他)

寄付金の使いみち

本プロジェクトで必要としている資金は、当法人ですでに有料で提供している以下のプログラムを、外国人ひとり親家庭や困窮世帯の子どもたちのために無償で提供するための資金に充てさせていただきます。

・初級日本語教育プログラム 90時間×6名分 252,000円
子どもの日本語教育の専門家が、基礎的な日本語文法や会話などを指導するフルタイムのプログラムです。
・初中級日本語教育プログラム 90時間×6名分 252,000円
初級プログラム修了あるいは同程度の日本語力を有する子どものためのフルタイムプログラです。
・15才以上高校進学準備プログラム 90時間×10カ月×5名 1,500,000円
15才以上で新たに来日し、都立高校進学を希望する生徒が日本語で高校入試を受けるためのフルタイムプログラムです。
・放課後高校進学準備プログラム 45時間×10カ月×5名 1,000,000円
中学校に在籍し、主に都立高校の全日制進学を希望する生徒が放課後に学習支援を受けるプログラムです。