• ミャンマーから隣国バングラデシュへ、命からがら逃げ延びてきた人々。逃れた先でも劣悪な環境で命の危機にさらされている。

  • 概要
  • 活動情報 2018年8月31日 更新

家族は殺された、暴行を受け、家を焼かれた―命からがら逃れてきた人々に、いま迫る感染症の危機

「夫は連行されて、消息不明です。軍は私たちを引きずり出し、家に火をつけて焼き尽くしました。ひどく殴られました。私は臨月でした。7歳の息子を連れて逃げました。数日間、森の中を歩きつづけ、木の葉を食べて生き延びました。赤ちゃんは、国境を越えて川を渡るボートの上で産みました。この子を暴力から遠ざけることしか、頭にありませんでした」(ロヒンギャ難民のフマイラさんの証言)

病気の母に代わって、生後3カ月の妹を世話するモハマドくん。

ミャンマーから逃れてきたロヒンギャ難民のフマイラさん(25歳)は、隣国バングラデシュの難民キャンプで暮らし始めて3カ月後、ショック状態に陥っているところを国境なき医師団(MSF)のチームに発見され、入院しました。衰弱しきった母親と赤ちゃんの病床には、7歳の息子、モハマドくんが寄り添っていました。

雨が続いた後、水浸しになった難民キャンプ内の様子。

昨年8月25日以降、フマイラさん家族のように、暴力に追われミャンマーから逃れてくるロヒンギャ難民の数は増え続け、90万人以上(2018年3月時点)が国境沿いの過密な難民キャンプに暮らしています。

ビニールなどで作った住居が並ぶ難民キャンプ。モンスーン到来でさらなる環境の悪化が危惧される。

しかし、難民キャンプの環境は劣悪です。人々の健康状態は非常に悪く、すでにはしかやジフテリアなど命に関わる感染症が流行。6月からはモンスーンの季節が到来します。ビニールや竹でつくった仮設住居が嵐で破壊され、急ごしらえのトイレ、井戸が乱立するキャンプ内が水浸しになるなど、新たな病気の流行の恐れがあります。

劣悪な環境で最も病気のリスクにさらされているのは子どもたち。

国境なき医師団は、日本の皆さまからも温かいご支援を得て、現地で緊急援助を展開中です。水・衛生施設の整備のほか、負傷者や感染症の治療、性暴力被害のケアなど、医療活動も全力で拡大しています。4月にはキャンプ内に100床の新しい病院を立ち上げました。(詳しくは活動報告ページをご覧ください)

<難民キャンプから~スタッフの報告>

難民キャンプで性暴力被害者のケアを担当した、小島毬奈助産師。

「世界中どんなところでも、災害や紛争が起こるとレイプの件数が増えるものです。昨年8月下旬、ミャンマーから大勢のロヒンギャ難民がバングラデシュへ避難してくる事態を受け、国境なき医師団はいち早く現地に入って対応しましたが、レイプの相談数がかなり増えたことから、性暴力ケアの活動を拡大することになったのです。」

「性暴力ケアの活動では、経験豊富な現地の助産師が中心となって、被害者のカウンセリングを行います。難しいケースなどは相談しあい、人工妊娠中絶が必要なケースも多かったので、産科部門とも調整しました。」

「ロヒンギャ難民のなかから女性のコミュニティー・ボランティアを募り、キャンプ内で性暴力被害の啓発活動をしました。“性暴力被害は緊急を要することであり、いち早く治療に来てほしい”ということ、また、“誰にでも起こりえることであり、秘密厳守、治療は無料である”ことなどを女性たちに伝えます。」

ロヒンギャの女性たちに性暴力について説明する。

「性暴力被害はどこの国にもあることですが、対応の方法や、ケアが必要な患者さんを見つけ出すことに難しさを感じました。被害を受けた大勢の女性たちと接し、その被害の深刻さには言葉が出ませんでした。」

「家族の前で性的暴行を受けた、家族を目の前で殺された、幼い兄弟を火の中に投げられた、最後は裸で逃げてきたが、逃げている途中に撃たれて家族を失った、など、本当に凄惨(せいさん)な話を聞きました。被害者の受けた心の傷は大きく、一生癒えることはないでしょう。」

「命に直結するわけではないと思われがちな性暴力被害ですが、危険な中絶で命を落とす女性がたくさんいるのを目の当たりにして、決して忘れてはいけない医療の一つであると実感しました。」

■小島毬奈助産師のインタビュー記事
「ロヒンギャ難民キャンプに隠れた性被害 日本人助産師が語る」

<国境なき医師団日本会長・加藤寛幸医師のメッセージ>

加藤寛幸小児科医(国境なき医師団日本会長)は、昨年9月に現地入りし、状況調査にあたった。

「キャンプに逃れてきた人々は、着の身着のままで、何日も食べ物を口にしていない人も珍しくありません。キャンプ内の環境は劣悪で、地面がひどくぬかるんでいるだけでなく、トイレは圧倒的に不足しており、その多くはただ穴を掘っただけのようなものでした。
そのため、数の限られた井戸水への汚染から深刻な感染症の流行を危惧しました。またロヒンギャの人たちの予防接種率はかなり低いと予想されるため、感染症対策も急務です。」

「未曽有の緊急事態を前に、人道援助活動は全然追いついていません。MSFは援助拡大に取り組んでいます。この危機的な状況が取り返しのつかないことになってしまわないよう、皆さまの支援を強く心よりお願い申し上げます。」

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丘の上に建つ新しい病院が、広大なロヒンギャ難民キャンプで人々を見守る

日本からも多くの方にご支援をお寄せいただき、国境なき医師団は現在もロヒンギャ難民キャンプで、命を守るための援助拡大に取り組んでいます。

新しくできた病院で肺炎の治療を受ける生後5カ月の赤ちゃん。

国境なき医師団(MSF)は2018年4月、バングラデシュ・コックスバザール県で、約70万人のロヒンギャ難民が身を寄せるクトゥパロン・バルカリ難民キャンプの中心部に病院を新設した。「丘の上の病院」と呼ばれるこの病院は、コックスバザールに連なる丘の上に建ち、誰もがすぐに見つけられる場所にある。

病院の場所は広大なキャンプの丘の上で、どこからでもよく見える。

着工は2月上旬。患者100人を受け入れ可能なこの病院は、ひと時も無駄にすることなくわずか2カ月で建設された。

建築資材を現場へ運ぶスタッフ。

モンスーンの吹く季節に入れば、難民キャンプでは洪水や浸水の恐れがあり、人々が必要な医療を受けることが極めて難しくなる。そこで、新しい病院は仮設ではなく、しっかりした作りの半常設の施設であることが求められた。建物はどれもコンクリートの基礎の上に鉄筋の構造でできている。

病院には、救急処置室1室、集中治療ユニット1つ、医療分析検査室1室、成人の入院病棟と小児の入院病棟、新生児ケア・ユニットを付属した産科、感染症患者の隔離ユニット1つ、重度栄養失調児のための集中栄養治療センターもある。

2歳のアニサ・ビビちゃんは下痢症と腎臓の疾患疑いで治療を受けている。

この病院で国境なき医師団は、呼吸器感染症や下痢などよく見られる疾病のほか、性暴力の被害者や外傷、呼吸器障害などの急患への処置も行う。

オープンした病院の病棟の様子。

現地で緊急対応コーディネーターを務めるフランチェスコ・セゴニは「糖尿病、高血圧、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患、ぜんそくなどの慢性疾患の治療もできます。これらは成人の最大の死因です」と話す。「慢性疾患の患者にとっては、必要に応じて入院治療が受けられることが重要です」

国境なき医師団は3月末と4月上旬にも医療施設を開設し、コックスバザール県でより広く、入院治療を含む二次医療を提供できるようにしている。さらに「丘の上の病院」では、雨期に多いコレラやE型肝炎などの流行にも備える計画だ。

「洪水や、よどんだ水がたまって、水と蚊に媒介される病気がいっそう広がりやすくなるでしょう。ロヒンギャの人々はとても過密した環境で暮らしており、衛生条件も非常に悪いからです」と、セゴニは話す。

トイレは多くが浸水しやすい場所に掘られ、井戸も多くがかなり浅いために水が汚染されてしまう。国境なき医師団は、4月までに手動ポンプの井戸を数百基、モーターポンプの井戸を25基設置し、合計3,200万リットルの安全な水を供給しているが、キャンプ全体に必要な量の清潔な水を行きわたらせるには足りていない。

■この未曽有の人道的危機から多くの命を守るため、これからも国境なき医師団のロヒンギャ難民緊急援助にどうぞお力添えを、よろしくお願いいたします。

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支援でできること一例:
3,000円で基礎医療セット120人分を用意できます。
5,000円で栄養治療食150食分を用意できます。
10,000円で清潔な飲料水600人分を用意できます。
※外国為替により変動します。

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